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07.11.00:31
ならば俺がやろう。
ついに打たれる終止符。蜻蛉です。 総参加作者数十四名。 総文字数1万6千文字。 今から最初から読まれる方は、ぶっちゃけ本一冊の努力が必要っぽいですwwwww 下手糞ながら、「もう完結でいいんじゃね?」との声が上がっている様子なので、空気も読まずに完結させていただきました。いやほんと、すんません。 内容についてはもう、「正直すまんかった」としか言いようが無い。 だってネコミミで回されたらやること一つだし。 【此処からコピペ】 ◆これまでのバトンの流れをおさらい 愁真さん→青蛙さん→ごん太さん→光太朗さん→伽砂杜さん→愛田さん→徳山さん→黒雛さん→卯月さん→きよこさん→俊衛門さん→北加チヤさん→藤夜さん→蜻蛉withネコミミ神 ※以下バトンルール※ +RuLe+ ●次の文章に、又は次の会話文に繋がる様に話を続ける事。 ●短くても長くても、会話ばかりでも文章だけでもOK。 ●多くの人に回しても大丈夫です。 ●恋愛小説になっても、同性愛になってもOK。全ては貴方の文章で変わります。 ●視点は自分好みで変えて下さって構いません。 ●前の人の続きから書く場合は、前の人の文を少しだけ前置きとして入れて置くと他の人が書きやすいかもしれません。 【僕と彼女と彼女の笑顔】(タイトル捏造。 ねぇ、君はいつになったら、僕に笑いかけてくれるの。 あの日やったことは確かに悪いことかもしれないけど…… 何度も謝ったよ! 僕は早く、君と今までの関係に戻りたいんだ。 いい加減、許してよ…… ******** 何度となく、彼女に話し掛けようとしたが無視されてしまった。 何がいけなかったんだ── もしかしたら あのことだろうか。 君が牛乳飲んでるときにビヨンセのマネをしたのがいけなかったんだろうか? ――じゃあ・・・何が良かったんだ・・・。 本当に悪かったと思っているんだ。 こんなことで君を失いたくないと・・・ ぼくは前歯に海苔を付けた・・・。 ******** いや、違った。 海苔ではない。日に焼けて黒ずんだリトマス試験紙だ。 なんでうちにこんなものが? いや、それはいい。リトマス試験紙だろうが、中国産キムチ海苔だろうが、今はどうでもいい。もとからキムチ海苔なんかないけど。だって高いし、あれ。 それはともかく、ぼくは彼女の機嫌を、彼女の心を、彼女の笑顔を取り戻すため、彼女の隣に座り、先日録画したVHSを再生させた。 きっと君は微笑んでくれる。 いつまでも子供なんだからとつぶやきながら、あの無邪気で可愛いらしい笑みを、ぼくに向けてくれるはずだ……。 32型の液晶ワイドテレビに映る……ピングー録画映像。 ああ、微笑ましい。 ピングー。 どこまで愛らしいんだ。 ピングー。 なにを言ってるのかわからないけど、そこがまたイイ。 最高だよ、ピングー。 「いい加減、ピングーはやめなさいよ」 「じゃあ、ミッフィーにしよう」 そんなぼくは、今年で37歳になります。 ・・・・・・・ そうだ、明日は彼女の誕生日じゃないか。 ピングーで若干機嫌を取り戻した彼女に、サプライズなプレゼントを渡して、もう一度あの頃のように笑い合おう。 ぼくは彼女をリビングに残し、明日――正確には後13分と迫った彼女の誕生日のため、プレゼントを探す事にした。 冷蔵庫の中身で……。 ******** 「キャラ弁だ、キャラ弁を作ろう」 冷蔵庫をのぞき込み、僕は決意を込めてそう口にした。 キャラ弁。 食材でキャラクターを作るという、あれだ。 「ピングー好きの彼女のために、作ってみせるぞ、ピングーのキャラ弁を。──あれ、ピングー好き?」 気づいた。 彼女はピングーが好きとはいっていない。 むしろいいかげんヤメロといっていたではないか。 ならば、僕にできることは、なにがあるというのか。 彼女の誕生日まで、あと五分を切った。 焦りばかりがつのり、絶望に頭をかかえ、天井をあおぐ。 その拍子に、僕の歯から、リトマス試験紙がはらりと落ちた。 まだついてたんだ、これ。 キレイ好きの僕は、腰をかがめてそれを拾いあげ…… ……目を疑った。 黒かったはずの、リトマス試験紙。 それはいまや、虹色に輝いていたのだ。 「こ、これは……!」 「気づいてしまったのね」 声に驚いて振り返ると、かすかな嘲笑を浮かべ、彼女が立っていた。 ******** 彼女が気味悪いほど、静かに僕に歩み寄る。 僕は思わず後ずさり、開けっ放しの冷蔵庫に背中をあてた。 冷気は少ない。お手製の冷蔵庫カーテンは、なかなか使えるモノだな。と心の中でうなずく僕がいる。 って、そーじゃなくて! さっき僕は思わず声をあげてしまったが、実のところ、なにも浮かんでいなかった。それでも彼女の真意を探るべく、虹色リトマスもどきに視線をもどした。 そうだ、きっとここに何かヒントがあるに違いない! そう考えた僕は、冷や汗を流しながらも必死に考える。 なんだ、なにが僕に足りない? ああ、誕生日の事も考えないと! 彼女はいまや目の前で怖い笑みを浮かべ、仁王立ちしている。 「あ、あのさ。忘れてたわけじゃないんだ」 「ウソよ! そんなトコ開けてるくらいだから、心の底から忘れてたんでしょう?」 「いや、これは、うん。あれだよ! ほら!」 僕は慌てて冷蔵庫の扉を閉める。 考えろ、僕! 自分を叱咤しながらも、僕は冷蔵庫から手を離せなかった。 はっと気が付く。そういえば、冷凍庫にすっごいの見つけていたのを。 すかさず冷凍庫を開け、一番上に乗っていた、一番でかいアイスの箱を取り出した。 「ほ、ほら! これって虹色じゃないか?」 「それがなに? それ、私がさっき買ってきて、入れさせてもらってたのだけど?」 ……まずい。たしかに僕が買った記憶はなかった。 あまりにもうまそうで、パニックになろうとも差し出すべき物じゃなかった。 失敗だ。これじゃない。 「し、知っているとも。ものすごいうまそうだと思ってさー、どこで買ったの?」 彼女は答えず、僕をじっと見つめてくる。 ――彼女の誕生日まで、あと四分。 ******** あああ、どうしよう! ぼくはとりあえず、こう言った。 「虹色アイス、ナァーイスチョイス」 彼女に向かってウインクし、グッと親指を立ててみたのだが、彼女の反応はすこぶる冷たかった。アイスとナ(ア)イスをかけたのに。ついでにナイスとチョイスもかけたのに……。ダメっすか? ダメっすよね? はい、すみません。っつうか、ギャグになってねぇ。 ぼくは、彼女の表情を見て、心の中で謝った。親父ギャグをかましている場合ではない。見ろ、彼女の顔を。今や仁王像もかくやという顔をしているじゃないか。やばい、やばすぎる。彼女の誕生日のことも考えないといけないのに! そう、思い出せ。彼女は虹色のリトマス試験紙もどきを見たぼくに、『気づいてしまったのね』そう言っていた。ぼくは彼女にとって、気づいて欲しくないものをみつけてしまったのだろうか? でも、彼女の性格を考えればむしろ逆かもしれない。 早く気づいて欲しかった? それはなぜ? 誕生日が明日、いや、三分後だからか? そして、リトマス試験紙にヒントが隠されている。っていうか、そもそも何で黒から、虹色に変わるんだ。それとも、虹色に変わらなきゃならなかったのか……? 「ねぇ、分からないんでしょう? 本当は」 彼女の冷ややかな声がぼくの耳を打った。やばい、これは本当に怒っている。ぼくは、彼女から目をそらした。ああ、やばいやばい。考えろ、考えろ。考えるんだ! 虹色。にじ……。ニジ? あれ、もしかして。しかも、黒から、虹。 あ! そうか。このアイスもヒントなのかもしれない。ぼくの考えが正しければアイスも虹色じゃないといけなかったんだ! ボーン。 ボーン……。 壁掛け時計から、十二時を告げる音が部屋に鳴り響いた。それとともに、彼女の口から溜息が漏れる。 「わたし、もう帰る」 ぼくは背を向けた彼女を後から抱きしめた。 「け、結婚しよう! クロ」 クロ。それは彼女のあだ名だ。そう、彼女の苗字は黒澤。ついでに言うと、ぼくの苗字は虹川。そして、ぼくのあだ名はニジ。 彼女がぼくに期待していたのは、プロポーズだったのだ。リトマス試験紙は、黒色から虹色に変わった。 つまり、彼女は黒澤から虹川に変わる事を望んでいたんじゃないか? そして、虹色のアイス。虹アイス。にじあいす。ニジを愛す。 このアイスは、ぼくへの愛を表す為に彼女が買ってきたものなんじゃないのか? きっと、そうだ。そうに違いない! 彼女がぼくの腕の中で身じろぎした。そして、ぼくを振り向いて口をひらいた。 ****************** こっからが徳山パートです。 彼女の型のいい唇が動いた。 「それだけ?」 「え?」 なんだ? まだ何かあるのか? 一体なにを……。 ハッ、そういえば! なぜ「クロ」を表現するのにわざわざリトマス紙を使ったんだ!? 普通に海苔でよかったのに! なぜリトマス紙なんだ。 原点に帰って考えてみよう。リトマス紙は本来黒いものか? 違う。リトマス紙は赤や青になるものだ。 「赤……青……」 彼女はするりと僕の腕から逃れ、少し距離を置いてこちらに向き直る。 まさか! 「あ、アカネとはもう完全に手を切ったからな! ってか、アイツ新しい彼氏見つけたらしいし!」 「……」 「青井とはそもそも付き合ってなかったから! 周りが勝手にウワサしてただけだからな!」 茜と青井。以前、僕と付き合っていた(と言われていた)二人の女。あいつらではなく、自分を選んでほしいということだろう。赤でも青でもなく、黒を選んでほしいってことだ! そして黒は虹になる! 「僕が……僕が選ぶのは、クロ。お前だけだ」 「……」 彼女はうつむき、指先で服の裾をいじっている。前髪のせいで彼女の表情は見えない。が、わずかに肩が震えているのを僕は見逃さなかった。 涙をこらえているようにも見えた。その姿が急に愛おしく感じられた。 「僕と結婚してくれ!」 捻りもなにもないストレートな言葉。これで全てが解決する! そして彼女は言った。 「だが断る」 ……。 「なにィィーッ!?」 えッ、ちょっ、ちちちちち違うのか!? プロポーズとか関係なかったのか!? だとしたら…………サ・イ・ア・ク。 「もう、本当にバカね。何を勘違いしてるの?」 「え?」 彼女の口元が、かすかに笑ったように見えた。決して冷ややかではない笑みだ。彼女が一歩前に進み出て僕の手を握った。 ****************** (以下黒雛パート) 彼女は囁くように言葉を紡いだ。 「わたし、ニジのこと大好きよ? 大好きすぎて、どうしてもわたしだけのニジでいてほしかったの。だから……」 彼女の声はか細く、今にも消えてしまいそうで。 そんな彼女を、僕は不安と期待を込めてじっと見つめる。 「ニジがわたしにぴったりの男になるように、眠っている間にちょこっと人体実験したのよ」 彼女が、笑った――。 昔のようなふんわりした笑顔ではなく、どこか小悪魔的な微笑。 ……っていうか、え、人体実験?! お手軽にできちゃうわけ?! っていうか、マジでえ?! 体中に嫌な汗が噴出し、僕は急いで壁に掛けてあるルームミラーの前に立った。 どこか異常な点がないか、くまなく調べてみるも特にこれといった変化は見あたらない。 そろりと彼女に視線を送って、僕はおずおず口を開いた。 「特に……変わったところなんて……」 ……変化……変化? ……ハッ! そういえば、歯に付いていた黒ずんだリトマス紙、虹色に変化していたじゃないか! 「そうよ、ちゃんと人体実験が成功したかどうか、確かめるためにリトマス紙をこっそり付けたの。気付いたでしょ? リトマス紙が虹色に変色していたのを。『ニジ、メルヘン化計画』は成功したはずなのに……どうしてなの?!」 はじめは落ち着いていた彼女だが、次第に声を荒げ、髪を振り乱し、怒りを爆発させたのだ。 「今日はわたしの誕生日よ?! わかるでしょう? メルヘンでファンキーなプロポーズが全て! メルヘンじゃないあなたは、デコのほくろを取ってしまった、せん●さおと同じよーーー!」 ****************** (以下、卯月パートです) なんてことだ! ほくろを取ったせん●さおと同じだなんて……。僕はそこまで落ちぶれてしまったのか!? もはや僕には何も残されてないというのか!? いや、そんな筈はない。僕はにやりと笑った。 「見せてあげるよ、クロ。君への愛を。君からもらった力を使って」 言われてみれば、全て納得がいく。 先ほどから感じていたこの不可思議なエネルギー。体の奥底から迸る力は、彼女が与えてくれたものだったのだ。 思わずキャラ弁を作りたくなってしまうほどのメルヘンちっくな気分も。奇妙な心の昂ぶりも。 「うぉぉぉぉ!! 来るがいいっ!! 地中に眠る小さき命よ!! 我が身に宿って、その命を芽吹かせろぉぉっ!!」 床に手を当て、僕は力のあらん限り叫んだ。 そこからどんどん力が流れ込んでくる。ここは二階で、下は地面じゃないとか、そんな小さなことはどうだっていい。なんとなくその気になればいいのだ。 やがて、渦巻くエネルギーの全てが僕の頭に集まった。今だっ!! 自然と浮かんできた、力ある言葉を叫ぶ。 「ファンキー・モンキー・メイクアーーーップッ!!!!」 途端、僕の頭に変化が起こった。 ルームミラーに映った己の姿を見て、僕はにやりと笑う。 むくむくと膨らんでくる髪の毛――狙い通りだ。 「ま、まさかっ!? あなたは一瞬で理解したというの!? あなたに与えた能力――ミスティック・ヘア・アレンジメントの全てをっ!」 驚愕の声をあげるクロを優しく見つめ、僕はゆっくりと立ち上がった。 「もちろんさ、クロ」 今や僕の頭は通常の5倍以上の容積に膨れ上がっている。 それはひとことで言うとアフロだったが、無論、ただのアフロではない。 メルヘンアフロ。とでも言おうか。 薔薇。薔薇。薔薇。 そこかしこに薔薇が咲き乱れているのだ。匂いたつような真っ赤な薔薇が。もこもこの髪の毛に包まれて。 これこそが僕の得た能力――ミスティック・ヘア・アレンジメントの力なのだった。 「今こそ言うよ、クロ。愛してるよベイベー」 アフロの中から一本の薔薇を引き抜き、クロに差し出しながら僕は言った。 「ニジ……」 瞳を潤ませ、クロは僕を見つめ返す。 今度こそ――僕は確信した。 だが次の瞬間、その自信はあっけなく崩れ去る。 「まだよ。まだ足りない。メルヘンもファンキーも、まだ足りないわっ!」 首を横に振って拒絶の意を示すクロ。 なんだって!? このアフロじゃ足りないと言うのか!? 僕は驚愕した。 が、一瞬で立ち直る。 もっと咲かせて欲しい。そう言うのなら咲かせてみせようじゃないか。メルヘンも。ファンキーも。 それこそが、僕の愛の証明だっ!! 僕は再び力を集中させた。するとそれに呼応するかのように、アフロも巨大化を始める。 どんどん膨れ上がっていくアフロ。 何故か一緒に伸びていくモミアゲ。 「これでどうだクロッ!!」 「まだよ! まだ足りない!」 「うぉぉぉっ! ど、どうだクロッ!」 「もう少し! あと一声!!」 「うぉぉぉぉぉっっ!! こ、これでバッチリだろ、クロ!?」 「う~~ん、残念っ!」 残念ってなんだぁぁぁぁぁぁっっ!? もはやアフロは、天井にまで到達する勢いだ。 モミアゲは、縦巻きロールと化している。 正直、立っているのも辛い。重すぎる。意識が朦朧としてきて、がくっと膝をつく。 だけど、諦めるわけにはいかない。僕は一心不乱に祈った。 神様。風の神様。どうか、みんなを守って。いやむしろ僕を守って。 神様。ピングー様――――――!! その時。 辺りが七色の光に包まれた。 ****************** (ここからきよこパートですー) そう、諦めるわけにはいかない。 彼女に愛を伝えるために、何が何でも僕はファンキーモンキーベイベーにならないといけないんだ。 七色に包まれた室内で、僕は頭がだんだん軽くなっていくのを感じていた。 目の前によぎるのは、ピングー様の笑顔。 やっぱりかわいいよ、ピングー様! なに言ってるかわからないけどっ! そこがいいいいい!! 室内に充満した七色の光はゆっくりと収まっていく。キラキラと輝き、僕の視界を眩ませる。 頭が軽い。もやがかかったようにぼやけた僕の頭がようやく動きを再開させた。 ズル、と音がする。ズル、ズル、と。 何の音だ? と頭を上げた瞬間、それは起こった。 僕の大事なアフロが、ズルズルズルズル……。 ――落ちた。 そんなまさかの、つるっぱげ。 「ずるむけしたーーーー!!」 さようなら、メルヘンアフロ……また会おう、メルヘンアフロ……。 そんなことより、彼女はどこに? 僕のアフロとアフロから生えた薔薇で覆いつくされた室内に、彼女の姿は見えない。 まさか……! 僕のアフロとアフロから生えた薔薇で生き埋めに!? 「クロ! クロ! どこにいるんだ!」 僕は必死になってアフロと薔薇をかきむしり、彼女を探す。こんなアフロにつぶされたら、彼女の命も尽きてしまうかもしれない。 薔薇の棘が僕の手を傷つけ、洋服を破る。 茨(とアフロ)の世界で、愛する人を探す――まるで童話の「眠れる森の美女」のようではないか。 「メルヘンだ!」 これこそが彼女が求めたメルヘンなのだ! 僕は彼女が待っていた王子様で――茨(とアフロ)からお姫様を救い出すんだ! ファンキーに関しては、ほら、モミアゲが残ってるから。 1メートルもあるモミアゲ、しかも縦ロールなんて、ファンキーだろ? しかも、頭にモミアゲをかぶせれば、海原はるか・かなたの物真似だって出来る! 頭の上でチョウチョ結びにだって出来るんだぜ! かなりファンキー! 最新ファッションまっしぐらだ! そこの君、ぜひ明日から真似してみてね☆ おっと遊んでる場合じゃない。 茨を掻き分け、アフロの海に潜り、彼女を探す。 「ニ、ニジ……」 消え入りそうな、けれど確かに。僕に救いを求める姫――クロの声を聞いた。 ********* この先俊衛門のターン 声のする方に向かって、僕は走った。茨(とアフロ)が、お気に入りのシャツを裂く。 ちなみにシャツの柄は、去年フリーマーケットで買ったピングーTシャツ。1500円也。ごめんよピングー。でもやっぱかわいいよピングー。何を言っているかわからないけど以下略。 略すんなボケナスが、とかいう天の声が聞こえた気がするけど積極的に無視しよう。ポジティブシンキン。 僕にとってはクロこそが、唯一絶対なんだから。……いやまあ、ピングーとどっちがと言われたら、そうだな0・2ポイント差でクロだ。この場合の審査基準は国際ルールにのっとり、芸術点と技術点を審査員が評価する。どんな審査だよ、というツッコミは無しの方向でお願いしたい。そんなものは電気羊が見るアンドロイドの夢くらいどうでもいい。うん、わかりにくい例えだ。 「電気羊は夢なんて見ないわよ!」 と、背後からクロの声がした。振り返ると、クロの姿が。無事だったようだ。僕はほっと胸をなでおろした。 ただ、なんか様子が違う。 「無事じゃないわよ、この薔薇。便所のフレグランスで窒息するかと思ったわ」 あ、あのー……クロさん? どうしてそこでトイレの芳香剤を引き合いに? 天然の薔薇と化学香料はあなたの中では同じなんですね。って、女の子がそんな下品な言葉を使っちゃいけません! 「書き手の語彙が少ないから、しょうがないでしょ」 それ禁句だからっ! 読んでいる人が萎えるでしょう。いや、ツッコむべきところはそんなことじゃなくてだな。 「クロ、それは!」 クロの体は、宙に浮いていた。正確には、無数の茨が巻きつきニジの体を持ち上げている。というか、このアングルやばいんですけど。結構きわどいところまで見えそうなんですけど。あれか、ここを書いている執筆者もついにネタにつきてお色気に走ったか。読者に媚びてアクセス稼ごうって腹かいドチクショウ。 というか、これ以上メルヘンなことってあるのか? 僕がそう言うとプリンセステンコーのイリュージョンよろしく宙を舞うクロが、上空から叫んだ。そんなに天井高かったっけ? 「ニジ、まだ足りないわ! メルヘンも、ファンキーも」 さいですか。でも僕としては十分メルヘンかつファンキーだと思うんだけどね。このもみあげとかもみあげとか、特にもみあげの辺りとか! 大事なことなので3回言いました。普通は2回しか言わないんですよ、奥さん。出血大サービスです。 「どこが、どう足りないんだ!」 僕はすっかり毛根様がご逝去された頭を抱えて、悩んだ。普通、茨の森の中で眠る姫を、王子がちっすで起こすとか。彼女の望むメルヘンは、そういうもんじゃなかったのか? その時、薔薇の花びらが風に舞い上がった。大量の花びらは、空中で一つに集まり始める。それが、段々と輪郭を帯びてきた。黒い翼が、現れ始める。 そうか、つまりはそういうことか。 姫を救い出すまでに数々の強敵を倒さなければならない。どんなお話だって、王子様はすんなりと姫のもとにはたどり着けない。きっとこの塊も、なんか巨大なドラゴンとかそういうのになって僕がそれを倒す。そして姫(クロ)を救い出して、ハッピーエンド!! おお、なんとメルヘンな。これが、彼女の望んでいたメルヘンなんだな! 集まった花びらが、一つの生き物に変化した。 ドラゴン? ガルーダ? ケルベロス? 花びらの集合体は……巨大なピングーになった。 ********* ☆ここからチヤ劇場 巨大ピングー略して巨ピンが、嘴をラッパの形にして唸り声をあげた。 「ドゥッドゥー」 低く大きな音。雷の嘆きにもにたそのすさまじい爆音で、空気が震えた。 僕のファンキーなもみあげはブルンブルンと上下に揺れ、部屋に飾ってあったクロとのラブラブツーショット写真は倒れて床に落ちた。飾り棚の上にずらりと並んだ僕のボトルシップコレクションはボトルが割れてただの船模型と化し、部屋の壁に飾っていたクロのペナントコレクションはパタパタとはためいた。 シロアリに浸食された柱にはひびが入り、窓ガラスや食器などの割れものが皆音を立てて割れる。耐震偽装されたうちのマンションは大きなトラックが前の道路を通っただけでかなり揺れる。だから巨ピンの鳴き声から発生した振動で僕の部屋は少しだが傾いてしまった。 やばい。こんな事が大家さんにばれたら、ここから追い出されるかもしれない! クロにプロポーズしても、住む家がないんじゃどうすればいいんだ!? そしてもうひとつ心配が。こんな大きな音を出したらご近所迷惑になるんじゃないか? 迷惑条例とかいうやつで逮捕されるんじゃないか? 珍しく常識的なことを考えた僕は、心配になって窓の方を見た。すると割れた窓ガラスの向こうから、隣の小池さんがいつものようにラーメンをすすりながら僕の家をのぞいていた。 「あはは。虹川君、こんにちは。まあ、わしにはかまわず続けて?」 小池さんのラーメン丼にもひびが入っていた。あんたプライバシーの侵害で訴えてやるぞと僕が言おうとすると、 「そうよ、ニジ! そんなぽっと出の脇役なんかほっときなさい! あなたのやるべきことはただ一つ! このラブリーメルヘンピングーキングを倒すのよ!」 と天井に忍者のようにな格好で張り付いたクロが言った。 おお! スカートがめくれて丸見えだ! と思ったら、彼女はスカートの中にちゃんとブルマーを履いてた。でもまあ、僕的には下着よりブルマーの方が…… そんなことを考えていると、ラブリーメルヘンピングーキングというのが正式名称なのだろうか? ええぃ、もう長くて舌噛むからやっぱり巨ピンでいい。あいつが僕に攻撃をしてきた。 巨大な手?(翼?)が僕の体を掴んだのだ! 「うわぁ!!」 巨ピンは強い力で僕の体を締め上げた。苦しくて窒息しそうだ。それに僕は平均男性よりも体重が少ないやせ形体型。ちょっと前のア●ガールズ並に骨と皮しかない。こんなに強い力で締められたらぽっきりと折れてしまう。 僕はやつの手から抜け出そうと必死にもがいた。幸い巨ピンの手はぬるぬるしていて滑りがいいから、どうにかすれば抜け出せそうだ。僕は大きく体を揺らし、やつの手から逃れようと思いっきり噛みついた。すると、 うまい!! 巨ピンの手は中国産海苔キムチの味がした。そう巨ピンはキャラ弁の怪物だったのだ! 僕のメルヘンアフロからできたあの大量の薔薇。それからできたピングーがどうしてこんな味になるのかは見当がつかなかったけれど、僕はめったに食べられない海苔キムチをこの機会にと思ってむしゃむしゃ食べた。 「まいうー。まいうー」 すると奇跡が起こった。 なんと僕のつるっぱげた頭に髪の毛が生え始めたのだ。それもふっさふっさの真っ黒い髪の毛が! 「ピャーピャー!!」 巨ピンが痛がっていたけど、僕は構わずにやつを食べた。 なぜって食べると元気が出てくるんだ。可哀そうだとかグロテスクだとか考える余裕はなかった。それにこの世界は弱肉強食、食うか食われるかなのだ! 大体そんなこと言ったらアンパンマンを食べるカバオはどうなんだ? 残酷じゃないのか!? しかし、僕は巨ピンの腕を一本たいらげたところで止まってしまった。まあなんていうか、味に飽きたのだ。白い飯が欲しくて仕方がなくなった。 くっそう! 白米は昨日みんなおにぎりにして食べてしまったから残っていないし、今からコンビニに買いに行くわけにもいかない。ここまで来たのに、クロ。君と早くラブラブに戻りたいのに!! 悔し涙を飲んで天井を見上げると、クロが何かを訴えるように僕を見つめていた。こんなヘンテコな試練を与え僕を苦しめているクロも、心の底では僕が勝利しラブラブなハッピーエンドを迎えることを望んでいるのだ。 僕は胸の底がじんと熱くなるのを感じた。愛の力で乗り切れないことなんてこの世にはない。そうさ、僕はやればできる子なんだ! 僕はもう一度巨ピンに突撃した。そして今度は腹の白い部分に噛みついた。 うまい! まさかのカレー味だ。白だから米でできているのではと思って期待したのに、なんでか白い部分はカレー味、ホワイトカレーの味がする。これも米が欲しくなる味だ! 僕は泣きながら巨ピンの白い腹を食べ続けた。 ……がぶがぶむしゃむしゃ。 けれど、半分まで来たところで飽きた。やっぱり白い米が、日本人には白い米が必要だ。僕はばたりと仰向けに倒れこんでしまった。 もう、駄目だ…… 口の中はしょっぱいし辛いしで喉が乾いてしょうがない。腹もパンパンで身動きが取れない。頭は髪の毛が異常に伸びて重いし。それに、この角度から見るとクロの白い太ももがいい感じにセクシーだ。 「ピューピュー」 部屋の隅っこでは体が半分になった巨ピンが泣いていた。 このまま僕は灰になってしまうんだろうか? 死ぬ直前に見たのがクロのブルマだなんてなんだか空しすぎる。こんなことなら殴られるの覚悟で、一度クロに猫耳をつけて貰うんだった。ああ、あれはまだ僕の机の引出しに入ったままだ…… そんなことを考えていた時だった。 「虹川君! 甘ったれるんじゃない! わしなんか毎食ラーメンだが、飽きたことはないぞ。なぜならわしは、ラーメンを心から愛しているからだ。そう、君には愛が足りない!」 小池さんが叫んだ。 ********** ◆ここからガクブルで藤夜カオス降臨◆ 「あ、『愛が足りない』……っ?!」 僕の頭は混乱した。何に対する愛が足りないというのだ?! クロへの愛情なら溢れるほどある! そして0.2ポイント、クロより低めではあるが、ピングーにも愛情がある事はクロとのこの微差が如実に表しているはずだ。 あ、いやゴメン。巨ピンのお陰で、マイナス5ポイント今下がったんだっけ。 「!」 そ、それか……っ?! それなのかっ! それが僕に、クロという勝利の女神をこの腕(かいな)に抱かせてくれない原因だと言うのか……っ?! 待て、では愛するとはどういう事なのだ。考えろ、マジモードで考えろ、僕っ。 幾ら此処までカオスな展開で流れて来ているとしても、所詮今の僕を構築している藤y(ryはド素人、過度なプレッシャーから期待に答えようとコメディ展開を狙っても、滑って転んで死亡フラグが立つだけだ。 僕が死んじゃったらクロに会えないまま、このリレー小説が終わってしまう。 嫌だよ僕、死因が巨ピンとかカオスとか。クロとの最後の思い出が、こんなもっさりヘアと残骸のアフロまみれにクロの中途半端にせくしーなブルマー姿なんて。 って言うか、何故僕は小池さんなんて下っ端キャラの友情でさえないザコキャラに、偉そうに『愛が足りない』なんて言われなきゃならないだっ。 愛が足りない、なんて……あいがたり……アイがた……っ?! 「そうかっ! 酢だっ!」 僕は、まだやれる! あのリトマス試験紙に愛を感じたよ! 虹色アイスは、クロの愛あるヒントだったんだねっ! リトマス試験紙が虹色から再びアルカリ性の青に変わったのは、僕に 「しょっぱくて辛くて苦しくなったら、お酢で味を変えて食べつくしてね」 という愛のこもったメッセージだったんだっ! つまり、『愛(の)酢』! 「クロ! こんな奥深い愛を感じたのは初めてだよ! やっぱりキミを愛してる!! 結婚しよう! すぐしよう! 今しよ――」 「解ってない……ニジ、あなた、何にも解ってないわ……っ」 ……え? 「あなたね、さっきから私をクロって呼んでるけど、どっちのクロか解ってる? アタシはお姉ちゃんじゃない方よ? それにね、リトマス試験紙、最初は黒だったでしょ! 何を勝手に初期色赤に設定して妄想かましてるのよ!」 い、言われてみれば、さっきから不審な点はあった気がする。 僕の愛するクロは『便所』とか『だが断る』とか、今の様な『かます』とか、そんな汚い言葉を使わない。 「ま、まさかあのリトマス試験紙の赤と青の違いって……?!」 「やっと一つ気付いたわね。そうよ。お姉ちゃんの名前、MISAOのAOじゃなくて、SAYAKAのAKA、双子の妹、私という意味だったのよ。おーっほほほほほほ!!」 な、何で笑い声だけ上品なんだ、黒澤さやか(妹)! 少しずつ、これまでの辻褄が符合してゆく。 こんなにもクロ(MISAO=姉)一筋である最近の僕なのに、その愛を試す様な一連の今夜の出来事、彼女(SAYAKA=妹)が口にした 「わたしだけのニジでいてほしかったの。」 という言葉、元の色に戻った(かも知れない)リトマス試験紙……ってっ! 「ちょっと待った――っっっ!!」 気がつけば、小池さんはラーメンを食べ終わって消えていた。 そして、確かにいた筈の巨ピンの姿も見当たらず。僕のもずの巣状態だった重く苦しい頭も徐々に軽やかになってゆき……。 「全て(倒壊した建物以外)が元に戻っていく……?」 カオスな状態が徐々に日常に戻っていくに従って、僕の混乱した思考も冷静さを取り戻していった。 よし、今がチャンスだ、おさらいをしよう。 とにかく、こんな夜中に何だけど、なぜか誰も起きて来ないが間違いなくあれから3時間は経っている。そして今日はクロ(姉妹)の誕生日。 僕が寝ている間にコッソリ人体実験をお手軽にやらかしたのは、僕が愛していないクロ@妹SAYAKAの方。 アフロ化、脱髪つるっぱげ、マッハで再び毛が生えて、巨ピンの登場、実は巨大キャラ弁だった。 それは今消えかけていて……。 虹色? 巨ピンは薔薇の花びらの集合体? 「待て、花びらが巨ピン化したのは一部だけだったぞ?」 まさか! まさかまさかまさかまさか!!!! 「うわああああああ!!!!!」 全てが掻き消えた今、僕の目の前に広がっているもの。 崩壊した僕の住む賃貸の安アパート。 茨でギタギタになったスカートの破れ目からブルマーを覗かせるクロ@妹SAYAKA。 そして……。 カラダの半分を食いちぎられた、クロ@姉MISAO、僕の愛した女の方が、先程まで咲き誇っていた薔薇の様な真っ赤な色に染まって倒れていた。 もう……カオス。 何もかもが、カオス。 めるひぇんとかファンキーとかどころじゃない。 舞台はホラー、スプラッタ。 あぁ、余談ですが、夏ホラー2008百物語、宜しくです。 何て誕生日になってしまったんだ。僕はクロを愛する余り、取って食らってしまったのか……。 「ふふふ……。崩壊したわね、ニジ。これでニジは私のもの」 クロ@妹SAYAKAは、僕の秘蔵のネコミミを、ティアラ代わりに勝手につけた。やめろ、やめてくれっ! それは僕がクロだけにと願って、偽名まで使ってようやく手に入れた通販グッズの秘宝なんだ! 「か……簡単に……やられて堪るかっ!」 僕は食らったクロ@姉MISAOを、渾身の力で腹を殴って吐き出すと、まだ消化されていない彼女の一部を掻き抱き、瀕死の彼女に近づいた。 僕のHPは黄色文字だが、まだMPはマックスだ! 僕はまだ、愛するクロ@MISAO姉の為にやれる事が筈だ! 僕は、究極魔法を必死で叫んだ。 ********** (以下より蜻蛉ワールドfeat.ネコミミ神) 「ネコミミ神、憑依!!」 今まで嘘をついていてごめんよネコミミ神こと『GOSI●AN』よ。右翼曲折したけど、僕はちゃんとここに帰ってきた。ピングーだとかキャラ弁だとかアフロだとか、色々あったけれど、僕はここに帰ってきたんだ!! 「そ、その魔法は……!」 「そう。ネコミミ王国に古より伝わる『愛』の魔法。すなわちそれは、絶対であり唯一神である神を憑依させること……。これで僕は、究極のネコミミ神になったというわけだよ、クロ@SAYAKA」 僕は血まみれで倒れている半身だけのクロ@MISAOの傍にひざまずいて、吐き出した一部を彼女の身体にくっつけた。 「このネコミミの良く似合いそうな女に、神の加護を……」 すると、彼女の千切れた身体はみるみるうちに接合していき、僕の胃袋で消化されたであろう部分はふさふさの白い毛で覆われたもので代用され、彼女は完全復活を果たした。 「ニジ……いえ、ネコミミ神。あたしを助けてくれたのね」 「そうさベイビー。君はネコミミ王国王女の生まれ変わり、姫を助けるのはいつだって僕の仕事じゃないか。王子様? ああ、なんかくさったみかんみたいな味がしたけど、それがどうかしたのかい?」 「……」 まあそんなことはどうでもいいさ。 今、ネコミミ神である僕とその神の治める王国の王女であるクロ@MISAOが揃った。これを目の前にして太刀打ち出来るものなど、この世界にはいない。これで僕の恋路を邪魔したクロ@SAYAKAを倒せる。 「ふ、ふんっ! そんなものどうとでもなるわ」 そう言うクロ@SAYAKA……面倒だからクロ妹の目は、まだ死んでいない。 この状況を目の前にして、まだ手があるというのか……!? 「くくくっ、失念していたようね、ニジ」 「なん……だと……?」 「今あたしの頭にあるものが目に入らないのかしら?」 !?!?!?!?!? し、しまった。究極魔法を打つことに集中するあまり、失念していた!! 彼女の頭の上には、僕が秘宝、『手触り最高、まるで本物のようなさわり心地を』のキャッチフレーズでおなじみの五万以上するネコミミじゃないか!! あのさわり心地はまるで天使の羽のようで、指先から伝わる柔らかな感触は二度と手放したくなくなるほどのものだ。その誘惑は人間の欲望ピラミッドの最重要項目をすべて放り出しても良いほどのもの……。 「ぐっ、右目が疼く……僕の中に眠る神が騒ぎ出している……!!」 無類のネコミミマニアで有名だった神が、そのネコミミの放つ魔力に惹かれている。身体の中でどくんどくんと脈打つものは僕のものじゃない。神が、神が暴れだそうとしている。 「気を確かに持って! ニジ!」 隣でクロ@MISAO……面倒だからクロ姉が僕を支えてくれる。 「無駄よクロ姉。さあ、ニジ……あたしと一緒にキモチイイ世界に行きましょう……」 その瞬間、ネコミミから身の毛もよだつほどの猛烈な魔力が溢れ出て来た。気を少しでも抜けば潰れてしまいそうだ。あのネコミミの魔力は、これほどまでに高いものだったというのか。 手足が震える。立っていられないというか、いてもたってもいられない。今すぐあのネコミミに触れたい。ただその衝動だけが電撃のように僕の中を駆け巡り、少しずつ支配を広げていく。指先が自分のものとは思えないほど小刻みに震え、腕と足がクロ妹のほうに伸びていく。 「ニジ! 落ち着きなさい!」 突然僕の前にクロ姉が立ちふさがる。 「クロ姉! そこをどいてくれ!!」 半狂乱に陥りそうな僕。もはやネコミミのことしか考えられなくなりそうになっていた。 「あのネコミミと、クロ妹を良く見なさい!!」 言われて僕は、もはや天使のリングに見えてきたネコミミと、クロ妹を見た。 ――そうか。 その事実に気付いた瞬間、僕の中のネコミミ衝動が急速に冷えていく。ネコミミ神としたことが、こんな簡単なことを見落としていた。 「クロ妹……君こそ、失念していたみたいだね」 「な、なんですって!?」 驚いた表情が滑稽だ。僕のことを愛しているというのに、そんなことにも気付かない。そんなものは、本物の愛じゃない……。 「ネコミミとは美学だ。猫と人間のキメラ的な存在でありながら、その小動物的な可愛らしさだけを残して人との共存を図った人類の成功だ。心の奥底に潜む母性本能とはまた違う、行動原理を司る感情を刺激する神の成せる業」 人の世にネコミミという産物が生み出された時、人々は狂乱して喜んだという。その美しさ、心のうちに潜む感情を揺さぶる謎の魔力。これを人類最大の成功と称さないで、何を成功と称そうか。 「そうだ。そんなものが――君ごときに似合うと思っているのかい?」 「……っ!?」 見た目はクロ姉だろう。声もクロ姉だろう。だが、そのネコミミをつけた姿はクロ姉ではない。僕には分かる。 そう、彼女は……。 「君はただの、ネコミミの付属品に過ぎないんだよ!!」 「そ、そんな……」 ……決まったZE……。 崩れ落ちるクロ妹。その頭から落ちるネコミミ。僕は近づいてそれを慎重に拾った。 「さあクロ姉。これをつけてくれないか……」 僕はそっと、クロ姉にそのネコミミを差し出した。 「……それは、言葉通りに受け取っていいのね?」 「ああ、そうだ」 彼女はほのかに頬を染めて、僕のネコミミに手を添える。 そう、これはネコミミ王国の『婚姻の儀式』だ。男性から女性にネコミミを手渡し、女性が受け取ればその婚姻は受理される。 僕の、精一杯のプロポーズだった――。 「やっと、やっと分かってくれたのね!!」 「ああそうだよ僕の愛しいステファニー。とりあえずそのネコミミをつけてくれないか。禁断症状出て今すぐ過ちを犯しそうだ」 「分かったわマイケル」 ステファニーは僕の手からネコミミをさらい、自らの頭の上へと導いていく。 ああ、この瞬間を一体どのくらいの間待っただろうか。百年では足りない、千年でも足りない。地球が創生されてから今の今まで、そのくらいの年月が経ったろうか……。ネコミミがまだ無かったとかほざく連中は今すぐ地獄行きだ。あったんだから。 そして……ステファニーの頭に、ネコミミが……。 「愛しているよ、ステファニー」 「あたしもよ、マイケル」 僕らはゆっくりと互いの顔を近づけ、誓いのキスを……。 「……っていう夢を見たんですが、どう思いますかみなさま」 僕は集まった作家たちを見回して、そう言った。 集まった作家は、この家に来た順に「愁真さん」「青蛙さん」「ごん太さん」「光太朗さん」「伽砂杜さん」「愛田さん」「徳山さん」「黒雛さん」「卯月さん」「きよこさん」「俊衛門さん」「北加チヤさん」「藤夜さん」「蜻蛉さん」だ。総勢十四名が集まり、パーティーを開いていたのだが、全員酒で酔いつぶれてしまったようだ。 「その夢、自分も見ましたよ」 「あ、それあたしも見たー」 「マジで? 俺も俺も」 「わたしも見ましたよっ♪」 なんということだろうか。集まったすべての作家さんが口々に同じ夢をみたと言うではありませんか。 なんという奇跡。そしてなんというカオス。あら不思議。 しかしみなさん、随分と楽しそうにしていらっしゃる。随分と長く、わけのわからない夢でしたが、楽しんでいたならば、たまにはこういう日もあっていいんじゃないでしょうかと言いたくなる。 「あ~、なんかまだ眠いな」 「わたしもー」 「もう一眠りしてから帰りますか?」 「そうしよそうしよー」 言われて見れば僕も眠たい。 とりあえず夢の続きを見ないことを祈りながら、もう少し眠るとしようか――。 FIN?? 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携帯からじゃページ表示しきらないことにまず感動した。まじ受験勉強してください…orz |
まさかの○オチ!(ネタバレ防止。
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受験勉強の『息抜き』に、って言ったのに、
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まwwwたwww俺wwwかwww |
カオスっていうか清涼感すら漂う。
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はじめましてですが、普通にコメントを残しちゃったりします。こんにちは^^
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リンクもなんもしてない野郎がいきなりコメしてすみません。
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最後は夢落ちでみんなの気持ちは、クライマックスでしたね。
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始めました中華ソバ・・・あ、いえ、はじめまして、こんばんわ<(_ _)>
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